有限会社ミノハラ製作所は、昭和56年にオムロン倉吉株式会社(現・オムロンスイッチアンドデバイス株式会社)の協力工場として、倉吉市の上小鴨地区に誕生しました。創業以来コネクターなどの電子部品の組み立てに特化。先代社長夫妻だけでスタートした会社は徐々に規模を拡大し、平成22年、父親である先代から後を継いで蓑原康弘が代表取締役に就任しました。27名の社員とともに、これまで培ってきた電子部品製造事業を軸に新たな分野にも果敢に挑戦している会社です。
2008年のリーマンショックの1年半後、2代目社長就任から10年。この間目まぐるしく変化する社会で会社を存続させるために、積極的に社内の改革に取り組んできました。工場の中では現場責任者だけが全体を把握し、従業員はその指示通りの作業を行うという属人的な性格が強い世界です。このため後継の管理職候補が育っておらず、その育成が喫緊の課題でした。同時に社長の蓑原自身異業種からの転職だったため、現場を知るためにも工場で社員と並んで手を動かし、業務のデータを収集して整理・検証し、1日24時間休みなしで働いていましたが、時間の確保が難しく、本来やるべき経営の仕事に手が回らないという大きな問題を抱えていました。そこで取り組んだのが“脳みその可視化”です。
現場の作業実績を正しく把握し、情報を社員と共有するためにはどうすればよいか。まずは現場責任者の頭の中にある情報を可視化することが問題解決の糸口になると考え、管理システムの開発に着手しました。当初から製品化を考えていたわけではありませんが、自社で運用して業務の改善データを得られたことで、「自分たちと同じようなことで困っている会社は多いのでは?」とさらにシステムを整え、平成29年に業務管理・改善支援アプリ『PROCESS VIEWER(プロセスビューワー)』をリリース。業界誌にも取り上げていただき、確かな手応えを感じています。
システムの導入を契機に働き方も大きく変化しました。能力評価制を採用し、その判断材料のひとつにPROCESS VIEWERで取得した作業実績のデータが役立っています。同時に社員自身が“考えること”を重視した意識改革や社員教育にも取り組み、弊社は今トップダウン型&ボトムアップ型の企業へと変わりつつあります。また電子部品の製造という事業の性質上、社員は外部の人との接触がなく、エンドユーザーとの距離も遠いためモチベーションを上げにくいという課題がありました。この新規事業が「自分たちが作成したシステムを他社が導入して業務改善に役立っている」と社員の自信とやる気を刺激し、心の充実につながればこれほど嬉しいことはありません。それが自然と、さらなる高品質と生産性の向上に結び付くことも確信しています。
この10年、必死に取り組んできた改革がようやく実を結びつつあります。今後も基本となる電子部品の製造でしっかりと足元を固めつつ、アプリのシリーズ化など新規事業への進出も視野に入れています。今後、AIがますます発展していくと言われていますが、創造性は人間だけのものだと確信しています。人を人たらしめるのは知恵を絞り出せることです。会社全体で一丸となって知恵を出し、“人の役に立つもの”を創り出す会社を目指してまいります。
令和2年1月
有限会社ミノハラ製作所
代表取締役 蓑原康弘