現場の人の動きの可視化で、製造原価の中の今まで見えていなかった部分が見えるようになり、今までできなかった改善ができるようになります。現場と管理者が一体となって行った業務効率化をご紹介します。
有限会社ミノハラ製作所
経営者の仕事は、社員のがんばりを経営数値向上につなげる仕組みを作ること
Point
- 誠意・努力・向上心 + 数値化されたデータによる分析
- 常に後継者を考える
導入の背景
先代から経営を引き継いで以来、「モノづくり」「工場の5S」には一生懸命取り組んでいたつもりだったが、なかなか経営数値に反映されないジレンマを抱えたまま、日々の生産に追われる社長の蓑原。
ある日気付いたのは、工場はモノを作るところだが、「工場の管理の仕事って何だ?」「そもそも社長の仕事は何?」ということ。
その気づきから、生産ばかりしていて、生産状況の把握、特に社員一人一人に向き合っていなかったことに気づく。
少量多品種生産で、一人の社員がいろいろな製品に携わらなければならない生産体制の中、今日一日「誰が」「何の製品を」「何時から何時まで」携わっていたか、ぼんやりとしかわからなかった。
そのため、把握している原価は曖昧で、どの製品に原価がかかりすぎているのかなどの問題が見えないままだった。
生産管理システムを導入して大幅な改善を図ろうとするが、価格は、数百万円は当たり前、入力もPCやバーコードリーダーが置いてあるところまで、わざわざ入力をしに行かなければならない、システムそのものの管理の仕事が増える・・・など、デメリットしか思いつかない。
そんな中、社長自ら基本的なプログラミングを習得し、スマートフォンで「人の動き」が把握できる簡易なシステムを構築する。
運用の効果
まずは、実際に現場のみなさんに受け入れられるかどうか。
スマートフォンで時間を測るといっても、ピンとくる社員は一人もいない。直観的に「スマートフォンのボタンを押す作業を増やされる」としか思われなかった。
しかし、導入直後から、社員一人一人の時間に対する意識の変化が確実にあり、特にどこを改善したわけでもなく、原価が約5%低減した。
また、並行して、導入しなければならない理由を数か月かけて説明し、ようやく浸透してきた。
これにより、開発当初の構想通り、製品ごとの原価を把握することができるようになり、改善に取り組まなければならない案件の絞り込みを行うことができるようになってきた。
儲かる製品でも必ず問題はある。しかしすべての問題に全員が対応できるだけの人員的、時間的、資金的な余裕はない。絞り込みを行うことで一つ一つ確実に対応することができるようになった。
また、管理者側から、「この社員の作業に問題があるのではないか?」という「感覚的な判断」はあったものの、本人に直接言うことはなかなか難しい。若手の管理者がベテラン社員に言うなら尚更だ。
しかしデータを通じて「問い合わせ」をすることができるようになると、ベテラン社員からも困りごとが出てくるなど、コミュニケーションが取れるようになってきた。
経営の視点では、製品ごとの原価がわかるようになったことで、投資や人事の判断材料にすることもできるようになった。
また、若手管理者の育成が重要な経営課題であるが、人の動きを把握することができるようになったことで、工場の全体像の把握ができるようになり、これまで属人的、感覚的に行われてきた管理に、明確な判断基準を持つことができるようになってきた。このことで管理者の教育にも貢献している。
目指す姿
進行していく人口減少社会においては、人の確保が難しく、少数精鋭でこれまで以上の能力を持った生産体制の構築が必要となる。労働生産性全国ワースト2位の鳥取県ではそれは顕著だ。(内閣府 県民経済生産より)
それを解決するにはIT・ネットワーク技術の導入は不可欠であるため、「モノづくり」の技術を極めるだけでなく、顧客にとって有効で、同時に、効率よく利益を出すためのマネジメントやビジネスシステムの構築が必要だと考えている。
今後は、ミノハラ製作所は、「モノづくり」「ビジネスシステムの構築」の両面から、社会に貢献できる企業になることを目指し日々努力していきたい。